Vol.3 対話式読み聞かせをしていますか?
高額な学費を払うことができるアメリカの富裕層のお家には、大概プールがあります。多くはメイドさんがいて家の中はいつもきれいです。インテリアには海外旅行に行った時の、家族の写真が飾られていたり、美術品や本に囲まれ、文化的な雰囲気が漂っています。彼らはそうした生活空間の中で、健康に留意し食生活もヘルシーです。
一方、貧困層の地域の学校では、政府から支給されている食料配給券を受給している家庭も多く、日々生きていくことで精いっぱい。子どもの学業をサポートするどころではありません。家庭での躾はままならず、学校でも問題行動のある子どもも多く見られます。上記はアメリカの一般的な私立と公立の学校のイメージです。
ヒューストンで最も授業料が高い私立と、貧困層の地域にある公立という、極端に違った環境の学校で、教鞭を取った経験のある友人は、格差についてこのように言いました。「授業料が高額な有名私立では、子どもたちは自分で何もしなくても、彼らには素晴らしい学びの環境が用意されてるの。でも、公立の学校で優秀になろうとしたら、(学びのリソースをどうやって手に入れたらいいか)というところから、考え始めなければいけないのよ。」と。
子どもには「最高の教育や環境を与えてあげたい」と思うのは親心です。しかしそれができない親はどうしたらいいのでしょう?十歳までしか学校に行かなかった、アメリカの政治家、外交官、著述家、物理学者、気象学者だった、ベンジャミン・フランクリンはこう言いました。
「貧乏であることは恥ずかしいことではない。貧乏を恥ずかしいと思っていることが恥ずかしいことである。」
物の見方をひっくり返し別な視点から見ると、違った世界が見えてきます。このことを逆から見てみると、むしろ素晴らしいチャンスが隠れています。富裕層ではない子どもたちが、将来、行きたい学校はどこでも行くことができ、何をするにも選択の自由を手に入れるためには、与えられてばかりいたら身につけることができない
1.「学習への意欲と好奇心」
2.「自力で学ぶ思考力と独学力を鍛える」
ことが必要です。そして、それらが身についた時には、子どもたちは、お金では買うことのできない能力を手に入れることができるのです。
対話式読み聞かせをしていますか?
チルドレン大学では、絵本の読み聞かせを推奨します。ただしそれは、単調に絵本を読んでお終いというような、機械的に本を何冊も読むことではありません。
尚、読み聞かせを小さい頃からすることによって、自分で多読できる子に育つ可能性は高まるでしょう。もちろん息子も、親が読み聞かせをしていただけでなく、自分でも多くの本を読んできています。しかし、我が家では彼が12歳まで、読み聞かせを続けていました。
単調に量をこなすだけだとしても、やらないよりはやった方がいいのは明白です。しかし、絵本をただただ読み聞かせるだけでなく、それらを効果的に活かす方法もあります。その根本は本を読む時に、言葉を発する際の口調や音調や抑揚を媒体として、親自身の気持ちが子どもに伝わると考えますと、理解されやすいかもしれません。つまり、親が機械的に読み聞かせをしているのと、親自身が絵本や本から様々な想像を働かせて、言葉を発しているのとでは、子どもに伝わる世界観が違ってくるということです。本というツール(ハードウェア)をどう活かし、想像、思考、学び、親子のコミュニケーションに発展させていくかは、ソフトウェアとなるお母さん(お父さん)にかかっています。そのソフトが良ければ、ツールはより一層効果的に活かされます。
とは言え、子どもは同じ本を何度も読んで欲しがりますし、心を込めて読む内容ではない、例えば消防自動車の本などもあります。また読み聞かせをする際には、時には本から派生させた会話を全くせずに、言葉や絵から放たれる世界を親子で堪能することも大切でしょう。しかし本をツールとして、親子のコミュニケーションを促進させ、読み聞かせを更に楽しくさせる方法があります。
本をツールとしてまずできることは、親の観察力を磨くことです。その観察の視点とは、子どもが何に興味があるのか、どのような疑問に身を乗り出すかなど、子どもの意識が何に向いたか、繊細に且つ、おおらかに観察し知ることです。それは、絵本に出てくる新しい言葉を覚えたとか、字が読めるようになったなど、目の前の結果を求めることではありません。それよりも、親は「自分」ではなく「子ども」にフォーカスすることで、子どもが今何に興味を持ち吸収しようとしているのか、どのような空想をしているのか、大人の心の視野を広げることで見えてきます。
ちなみに我が家では、ちょっとした会話の中で見つけた、子どもが興味を示した事に関連する本を、夫は常に図書館で借りてきていました。夫は決して「これを読みなさい」と与えたのではなく、いつも何も言わずにテーブルの上や、リビングのコーヒーテーブルの上に本たちを置いていました。それは息子が小さい頃から始まり、大学に行くようになっても、休みに家に帰って来る今でも続いています。興味のあることに関する本が、いつも何気にテーブルに積まれているため、息子は意識せずに、本に手を伸ばして読んでいました。夫は私にも同じことをするので、私の机の上にも、いつも何気に本が何冊か置かれています。しかし読まなければ、彼はただ図書館に返しに行くだけで特に何も言いません。
子どもの興味に沿って、子どもが目を輝かせ好奇心を持つことに、親が気付けたなら、今度はそれを派生させて、絵本の読み聞かせをしながらお話をしてあげます。一方的にお話しをする場合もあるかもしれませんし、子どもに質問をして、違った角度から思考させることもできます。子ども自身にも様々な想像をさせてあげながら、絵本を通じて親子で会話ができるようになれば、それはもう単調な絵本の読み聞かせではなくなります。絵本をツールとして、絵本から派生した様々なトピックについて、お母さんと子供が一緒に学べたら、なんて素晴らしいでしょう。
尚、“英語”の絵本の読み聞かせも、絵本から派生したトピックについて、どんどん日本語で教えてしまって構いません。英語については『ママ英語講座』の中で詳しく説明していますが、外国語を教える際には、物事の関連性が分かる事物を通して学んだ方が、言語の習得が促進されることは、研究結果でも証明されています。
さて、知識だけでなく、頭で理解している知識と、体験することで得る体感を実際の生活の中でリンクさせることで、学びが一層深くなっていきます。触ってみる、見る、実際にやってみる、という体感を知識とリンクさせるのです。
you must have the conviction that comes from personal experience.
持つべき物は経験を通じて得る確信である
上記は、人生の学びについて語られた第9代 Gyalwang Karmapaと呼ばれる、チベットの偉いお坊さんのお言葉です。これは子どもの学びにも、子育てにも、また人生の学び全てにおいて通じることではないでしょうか。
具体的には、絵本の読み聞かせを通じて、植物のお話をしたとします。
別な例では、魚についての本を読み、海の生き物の図鑑を見た後、実際に水族館に行ったり、または、すぐできることでは魚を一匹買ってきて、子どもと一緒におろしてみることもできます。親が常に話しをしてあげ、子どもの「な~に?」を学びのチャンスと捕らえ、深く掘り下げて子どもと一緒に学ぶ。そして、頭で学んだ知識を体感を通じて知覚させていく。またはその逆でも構いませんが、この一連となってネットワークさせていく方法が、私たちがしてきた教育方法の一環でした。
参考まで: 母は強しの体験教育
まだお子さんが小さいうちは、親は色々やることがあり大変ですが、もしそうした時期をも子どもと楽しんで一緒に過ごすことができ、親子で多くのことを学びながら、人生を送ることができたなら、あなたもまた将来、子どもの生きる力に任せ、安心して子どもを見ていられる親になれることと思います。
物を記憶させる勉強を教えるのは、さほどエネルギーと頭を使わずにできると思います。やらせればいいのですから、そうした教えにはそれほど想像力を必要としないかもしれません。しかし、考える力を養う教育を子どもが小さい頃にできるのは、あなたとご主人、つまり親にしかできない仕事です。そしてそれには、エネルギーとクリエイティビティ―が必要となってきます。
賢い子を育てる一番の方法は、学ぶことを好きにさせることです。物事を好きにさせるというのは、一方的にやらせるだけで培われるものではありません。しかし、もしそうした家庭教育を毎日の生活に取り入れ、正しく実践することができたなら、間違いなくあなたのお子さんも、学ぶことは楽しいと思えるようになれるでしょう。
下記の方法で実際に読み聞かせをしてみてください。また英語の絵本を使う場合は会話は日本語でOKです。 1.これは何?という質問を多くする
(絵本を見ながらこれは何?これは何だと思う?などの質問をする)
(解答がある話でなくてもいいので、とにかく子どもに自由に発想させる)
3.子どもの興味に沿って会話を進める
(決して親が一方的に押し付ける会話ではないということです)